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大阪府 泉南郡 田尻町
高齢者の健康維持に向けて
金芽米を無料配布
栗山町長に伺う
「たじり8000人の大家族」構想

大阪府の南に位置する田尻町。沖合には、関西の空の玄関口である関西国際空港を構える町です。東洋ライスでは、最新鋭の精米工場であるリンクウ工場が町内にあることから、以前より、田尻漁港で開催されるイベントでコラボレーションするなど、交流を深めてまいりました。

そんな田尻町では、昨今、猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の支援策として、コメを通じた取り組みをされました。今回は、田尻町の栗山 美政 町長にお話を伺います。

田尻町がどのような町なのか、教えてください。

「田尻町は町民が約8,600人、元々住んでいる方に加え、関西国際空港が27年前に開港したことから空港勤務の方や、堺、大阪への通勤者なども増え、今に至っています。

まちづくりの基本は、高齢者と若い世代の助け合い、若い世代が集まることで、高齢者が安心して暮らせる町をめざしています。そのため『教育』『健康』『子育て』に力をいれたまちづくりを行っています。

特に『子育て支援』としては、小学校、中学校の給食費無償化を2年前から実現しています。この給食費無償化の狙いは、経済的な負担軽減だけでなく、『教育』としての知育、徳育、体育に加え、食育を伝えたいという狙いがあります。また幼児教育の無償化も国に先駆けて実現しています。さらに町民税の10%減税も行っています。このように働く世代、若い世代、子育て世代への取組みを強化することで、若者が集まり、高齢者が安心して暮らせる環境が田尻町の強みとなっています。」

全国的、また大阪府内で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、田尻町独自の支援策として、町内の高齢者全員に金芽米を無償配布する取り組みを始められましたが、どういった経緯で、またどのような思いから取り組むことに至ったのでしょうか。

「新型コロナウイルス感染症対策については、行政だけが努力するのではなく住民の皆様と共に取り組まないと効果に結び付きません。そのため、住民の皆様にはご理解をいただき、不要不急の外出を控えて頂いている現状です。しかしながら、外出できないことが健康の妨げになっているというのも事実としてあります。

田尻町では、高齢者を中心に、総合保健福祉センターや集会所に集まっていただき、みんなで体操を行う活動を推進しています。体操による健康効果はもちろん、会場に来るということだけでも健康につながる運動になります。また集まることで仲間と顔を合わせ、おしゃべりして帰ることも若々しさを保ち心の健康へと繋がります。

しかし、今はこういった活動が新型コロナウイルスの影響でできなくなり、高齢者の方にとっては、体操ができないだけでなく、家の中に閉じこもっていることによるストレスや、身体を動かさないことによるフレイルのリスクなども心配されます。もちろん部屋の中で体操をすることなども推奨はしていますが、それだけでは十分ではありません。そういった状況の中、町内の高齢者の健康を維持していくために、町としてできることは無いかと考えた結果、食による健康という考えに至りました。

また、今回、町内の高齢者(65歳以上)の方全員に、金芽米を配布しようというきっかけとなったのは、友好都市である宮城県大崎市の存在です。平成の大合併で大崎市となった宮城県遠田郡田尻町とは元々“田尻町”という同じ町名が縁で友好都市の協定を締結しました。合併後の大崎市とも引き続き友好都市を継続して今に至っています。田尻町が台風で大きな被害を受けた時(2018年台風第21号による関西国際空港連絡橋タンカー衝突事故の時)には、ブルーシート等の支援物資を届けていただくなど、互いに助け合ってきました。

そして今般、コメの産地である大崎市と、食で高齢者の健康を改善したいという田尻町の事情、さらに田尻町には東洋ライスさんが精米工場を運営されていること、これらが結びつき、大崎市のコメを金芽米に精米して、町内の高齢者へ配布するというアイデアに至りました。

単にお米を配るという発想では無く、友好都市である大崎市のコメを、田尻町に工場を持つ東洋ライスさんに金芽米として精米していただき、田尻町の高齢者に届けることで、『健康に気をつけて一緒に頑張りましょう!』という強いメッセージになるだろうと考えました。」

今回の取組みについて町内の皆様からの反応はいかがでしたか?

「先日も、街中で『町長いいもんいただいてありがとう!』と声をかけていただきました。さらに役場の方にも『金芽米をいただけてうれしい』『無くなったら次どうやって買えるのか?』という声が寄せられております。

また、今回の金芽米配布で、町内に東洋ライスさんの工場があることを知った方も多くいらっしゃったようです。」

高齢者全員への配布ということですが、具体的にはどのように進められたのでしょうか?

「65歳以上の方のリストをまとめ対象者に申請書を郵送しました。希望者には住所、電話番号を申請ハガキに書いて申し込んでいただいたところ、約2,000人(約1,400世帯)からの申請があり、最終的には対象者の95%の方から申し込みをいただきました。金芽米は、世帯で一つでは無く、一人に一袋お届けしました。

また、今回高齢者だけでなく、ひとり親家庭にも配布しています。全ての町民に配れれば良いのですが、限られた予算を有効的に活用しなければなりませんので、この新型コロナウイルスの状況で経済的に苦労をされている方にピンポイントで支援をとの考えから、ひとり親家庭への支援を決めました。」

今後、どのようなまちづくり、コミュニティづくりをめざされるか教えてください。

「私が就任して『たじり8000人の大家族』というキャッチフレーズでまちづくりを進めてきました。町全体で、子どもたちの成長を見守り、共に育ち、助け合う。8,000人が一つの家族のようにみんなが共存していく町というのがコンセプト。昔の日本ってそういう良さがあったと思いませんか?現代社会で薄れつつあるこういった大切な価値を田尻町は今後も守っていきたいと考え、これからのまちづくりについてもそのような視点で取り組んでまいります。」